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未踏ソフトウェア創造事業体験記(5) - 感想編

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あかさたです。未踏ソフトウェア創造事業体験記(5) - 感想編です。前回は、未踏の成果報告について紹介しました。今回は、未踏体験談の総括として、未踏の感想や制度に関する話を紹介します。

未踏の制度的欠点

いきなり刺激的な話に入りますが、未踏ソフトウェア創造事業は非常に賛否の分かれる制度です。肯定的な意見としては、とかく日々の忙しい仕事に埋もれてしまいがちな IT エンジニアに、独自のアイディアを実現するチャンスを与えることができるというものです。否定的な意見としては、未踏は成果が見えにくいため、一種のばらまき(税金の無駄遣い)になっているのではないかというものがあります。

実際に未踏に参加してみたところ、未踏の意義が二つわかりました。一つは、企業ではリスクが高くて試せないような思い付きを試せることです。もう一つは、有益なんだけれど支援を受けにくいようなもの(数年前の Ruby とかね)に対して融通の利く資金源になるということです。

少なくとも後者のケースは成果も出ていて、例えば私がお世話になった千葉 PM 配下のプロジェクトで言えば、Ruby や Seasar に関して大きな貢献をしています。しかし、前者のケースでは、ぱっと思いつくのは対象を未踏全体に広げても、未踏ユースの SoftEther くらいしか思いつきません。言われるまでもなく、よく使われるソフトを作るには年数がかかります(ジョエルの記事参照)。しかし、未踏は最長でも 2 年(2 回)ですから、新しいソフトウェアを生み出す支援としては短すぎ、人材発掘という名目でプロジェクトを行うには長すぎるということになります。未踏ユースから数えて合計 4 回(4 年)支援を受けた人もいるようですが、それはかなり珍しいケースだと思います。

おそらくこれから制度の存続を含めて、未踏に関する見直しを行うでしょう。(未確認情報ですが、未踏という名前は 2008 年度からなくなり、人材発掘という面が前面に出てくる制度に変わるようです。)未踏自体は価値のある試みだと思うので、これまでの反省を生かした制度に育ってくれると期待しています。

コラム - 未踏に関する疑問

このコラムでは、未踏にかかわる素朴な疑問に答えてみます。

Q, 経歴は未踏の採択に影響ある?

某巨大掲示板などでよく出てくる疑問です。回答としては、あるといえばあるし、ないといえばないです。提案の審査を行う PM の立場になって考えれば一目瞭然です。未踏で提案されるプロジェクトはリスクの高いものが多いことは事実ですが、PM は少しでもリスクを引き下げて成果を出したいと考えているはずです。経歴以外にも、ドキュメントの質だとか、開発計画の妥当性などを考慮しながら、PM はそのエンジニアがそのプロジェクトを遂行できるかどうか判断していると思われます。経歴に自信がない場合は、リスクを担保するような情報を提案書に付加するとよいでしょう。要は、「このプロジェクトはちゃんとできそうだ」と思われればいいのです。

Q, 未踏はプレゼンがうまくないと受からない?

私はプレゼンしていると震えが出てくるような人間です。誠実さ/ドキュメント力/実装力などは求められる気がしますが、プレゼンのうまさは特に見ているとは思われません。

Q, 未踏は斬新なアイディアじゃないと受からない?

私自身がそれほど斬新なアイディアで採択されているわけではありません。斬新なアイディアで採択されている人もいますが、世の中を半歩先に進めるようなプロジェクトも好まれているように思われます。PM によって異なるので、よく調べておく必要があります。

未踏に応募する価値

未踏というと、好きなことやってお金もらって良いですねというように言われることも多いのですが、損得勘定でいえばあまり得はしません。大したお金が出るわけではありませんし、生活を保障するような制度でもありません。キャリアを積めるわけでもないので、未踏を経て自分がどうなっていきたいのか明確なビジョンがなければ、無駄に時間を費やすだけです。

それでも、未踏採択者に聞くと、「未踏をやって良かった」と答える人が多いようです。私の場合はというと、やはりやってよかったと感じています。単純に自分の好きなものが作れて楽しかったという面もありますが、未踏によって研究開発的なソフトウェア開発が得意/好きということを周りが認知するので、仕事はしやすくなった気がします。

とはいえ、税金を使って行った未踏プロジェクト、「好きにやれて楽しかった」では済まないと考えています。プロジェクトの成果物は、Kodougu のサイトで誰でも活用することができます。しかし、事業化するにせよ、OSS プロダクト化するにせよ、作りっぱなしではそのまま立ち消えて、結局税金の無駄遣いだったという話になってしまいます。

今、私は未踏で開発した Kodougu の実用化作業を人と相談しながら進めています。動きがあったらまたこちらで書かせていただきたいなと考えています。

以上、未踏体験記でした。自己紹介代わりに始めた未踏体験記が長くなってしまいましたが、次回から普通(?)の技術記事を書きたいと思います。モデリングや Rails、JavaScript などといったキーワードで記事を書きたいと考えています。それでは!

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執筆者紹介

あかさた

あかさた

未踏(2006年度下期)でWeb上で動作するモデリング環境 Kodougu の開発をしてました。こちらでもブログを書いています。

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