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未踏ソフトウェア創造事業体験記(1) - キックオフ編

タグ: 未踏

どうも、あかさたです。前回に引き続いて未踏の体験談です。前回は未踏に応募して採択されるまでを紹介しました。今回は、八角研究所の皆さんをお会いするきっかけになった契約説明会から開発に入る直前までを紹介します。

契約説明会

2006/12/1 に採択者の契約説明会がありました。未踏ソフトウェア創造事業も、お金の受け渡しがある以上、契約(開発業務委託契約)というものが存在します。それほど複雑な仕組みではありませんが、社会人経験の浅い私にとっては説明会がないとわけのわからないことになっていたと思います。

八角研究所の皆さんにお会いしたのも、この契約説明会でした。未踏には、開発者(採択者)の負担を軽減するために、プロジェクト管理組織(以下、プロ管)というものがあります。(プロ管自体は年度によってあったりなかったりすると思いますが。)請求処理、経費管理、契約管理などを代行してくれる組織で、直截的な表現をすれば、面倒な処理を一手に引き受けてくれるとてもありがたい方々です。プロ管は普通の民間企業で、毎年 IPA が公募して決まっているようです。プロ管は 10 社程度参加していましたが、開発者は、この中から好きな会社にお願いすることができます。

話を聞いてみると、八角さんも社員の方が未踏に通ったため、その方を支援するためにプロジェクト管理に参加されたのだそうです。もう一社、そういう会社がありました。会社がそういう形で未踏を支援しているというのは素晴らしいことです。会場では何社かお話を聞いたのですが、どこもしっかりとサポートしてそうなので、プロ管は話が合いそう(*1)な八角さんにお願いしました。

後ほど八角の方々はかなり面白い人たちであることがわかったのですが、それは次回以降にまた紹介します。

*1 八角の採択者の方のテーマが、私のテーマと割と近いところにあったことも理由の一つです。

キックオフミーティング

契約説明会の次は、2006/12/15 にキックオフミーティングに出席しました。ミーティングとは言いつつも、採択者がこれから何をやるのかプレゼンテーションして、それを出席者がツッコむという内容になっています。によると、「それってすでにあるよね」とか「どこが未踏なの?」とかかなり厳しいツッコミが乱舞する(採択者にとっては)非常に危険なイベントなのだそうで、戦々恐々としながら出席しました。

プレゼンテーションは、約 30 分。本当はプロトタイプをデモしたかったのですが、プレゼンで使えるレベルにはならなかったので、スライドだけで紹介しました。プレゼン資料はこちらで公開しています。

主に突っ込まれたのは三点。一つは、私が未踏で開発するプロダクトは、ある部分では容易に他のプロダクトが真似られそうなので、その時の対策を考える必要があること。(Web 上で動作する点とか。)二つ目は、未踏的な機能であるモデリング言語を設計する機能(*2)の分かりやすいメリットを示す必要があるということです。最後の一つは純粋に技術的な面で、JavaScript だとパフォーマンスなどの面から厳しいので、Flash などを使ってはどうかという提案でした。

最後の一つはともかく、最初の二つは Kodougu を開発する限り付きまとう難しい問題です。こうした本質的な問題に答えていくことが、私の未踏の開発ということになりそうです。

そういえば、このキックオフミーティングでクジラ飛行机さんに初めてお会いしました。(クジラ飛行机さんの採択概要はこちら。)クジラ飛行机さんは日本語プログラミングで有名ですが、千葉 PM から「悪魔は天使の顔をしてやってくる」と評されていました(笑)。そのココロは、「日本語プログラミングという邪教(!?)を広めている」からだそうです。

*2 Kodougu は新しいモデリング言語を定義することができます。

身辺整理

さて、普通のサラリーマンが未踏を始めるにあたって大切なことは、会社との関係をどうするかです。とりあえず、未踏に採択されてから上司に相談に行きました。おそらく、多くの会社でそうですが、働きながら未踏は可能です。私も会社に居ながらにして未踏をするいくつかのやり方を上司から提案され、非常に悩みました。結論を言うと私はこのタイミングで会社を辞めて、フリーランスになったわけです。決め手になったのは、二点です。

ひとつは、未踏で開発するものというのは往々にして未踏の期間中に完了するものとは限らないことです。たとえば、半年とか一年会社を休職して未踏をするという方法はありえますが、その期間以降は開発を進められるかどうかわかりません。会社の仕事の都合次第です。逆にいえば、期間内にすっきりと終わるものなら会社に居続けながらやるべきでしょう。それでも、二足のわらじはたいていうまくいかないので、会社に居続けるなら、未踏に専念するための環境を構築する必要があります。

もうひとつは、今のところ残念ながら未踏をやっても、会社という組織内ではあまり価値がないということです。元来、未踏というものは、通常の企業ではできないようなリスクの高い提案(もしくは収益に直につながらないがゆえに通常の企業では、やりにくい提案)を、行うことに価値があるわけです。未踏のテーマが会社の戦略と合っていれば問題にはなりませんが、なかなかそうもいかないのが実情です。未踏エンジニアがいるというのは、対外的には宣伝になりますから好ましいことですが、内部的な視点で見れば、エンジニアが未踏期間拘束されるだけなので、企業にとっても痛しかゆしなのです。これもまた、未踏期間終了後は未踏の成果物を打ち捨てておくしかない状況に追い込まれる要因なのかもしれません。

とまぁ、未踏はサラリーマンには何かと難しい点が多いです。未踏採択者の 1/3 はサラリーマンですが、皆さん勢いや人生経験で何とか乗り切っているようです。もちろん、未踏のお金は経産省から出ているわけですから、学生さんや学者さんがやるより(ここを補助するのは文科省の管轄!)、やはりサラリーマンが挑戦するべきだと私は考えています。

開発開始まで

さて、方針は決めたので、あとは当時の会社での仕事を完了して、未踏の開発に入るだけです。私が当時抱えていた仕事はなかなか終わらず、未踏開始からしばらく未踏の開発を行えませんでした。採択は 2006/11/17、退職は 2007/1/31 だったので、約二カ月半です。未踏は 10 か月くらいしかないので、約 25% 生産効率の悪い期間にしてしまい、非常にもったいないことになりました。サラリーマンの方は、仕事の調整をしっかりするように注意してくださいね!

さて、いよいよ未踏の開発が始まります。次回は、開発期間中何をしていたのかを紹介します。

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執筆者紹介

あかさた

あかさた

未踏(2006年度下期)でWeb上で動作するモデリング環境 Kodougu の開発をしてました。こちらでもブログを書いています。

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